制作中の銀のワイングラスですが、金工的には「絞り」という技法で加工していきます。
やみくもに金鎚でただ叩くだけではカップにはなりません。
で、どのようにしてカタチを変えるのか、
その「絞り」についてちょっと触れてみたいと思います。
(ちなみに画像は今回のものじゃないです:笑)
元はコレですね、ただの平たい丸板です。(タバコは気にしないでくださいまし)
で、まず「うつわ状」にしようとした場合、
ただ普通にやっただけでは当然このようになりますね。
丸い紙なんかに脳内変換してもらうとわかりやすいと思いますが、
紙を手のひらに置いて真ん中を押しつけると
ぐじゃってなってこんなふうにシワができますよね。
そのシワの部分を叩いて平たくしてやるとこのようになります。
紙の場合、シワを平たくすると元の平たい状態に戻るだけですが、
金属の場合は柔らかさというか、ぐにゃっとした性質がありますので(展延性)
シワをそのままつぶしてやることができます。
ここのところは粘土に脳内変換すると想像つきやすいかと思います。
で、これを繰り返して最終的なカタチに近づけていきますが、
シワをつぶすということは、その分が縮まって板の厚さに変わります。
てことは繰り返すうちにどんどん肉厚になってしまうじゃん、てことになりますが、
この肉厚になろうとするところを「高さ方向」に延ばしてやることで
板厚は変えずに高さだけ高くしていくことが可能です。
(実際には叩くときにこれを同時に行っています)
これが「絞り」の基本的な原理・金属組織の動かし方です。
機械でプレスするのも同じ原理です。
また、これの応用で様々なカタチにする「変形絞り」も可能です。
結論:「絞り」とは金属を延ばしたり縮めたりして自在に変える技法である。
・・・さて、早いとこワイングラス作ろっと。